【國際】中国の反日デモについて

すでにあちこちのブログでも取り上げられていますね。
かんべえさん曰く、日本企業の経営には大きな影響は出ないのでは、とのこと。

<4月15日>(金)
(注:一部抜粋、個別の状況については本文を当たってください)
○両国の経済関係を考えれば、日中がそんなに対立する理由がないのである。問題は国民感情とか政治的な思惑なのであって、そういう意味では「政冷経熱」になるのは当然である。いつも書いてる話ですが、「感情」が「勘定」よりも先に立ってはいけません。でも、最近の中国は「反国家分裂法」の件といい、感情的になることが多い。らしくない行動が最近多いのはなぜでしょう。
○その点、日本の対応はちゃんと「勘定」が先に立っている。たいした資源のない竹島はスルーして、尖閣諸島の資源探査には着手している。優先順位のたて方が正しいではないか。ちゃんと誉めておこう。

とはいえ、反日デモが中国国内に与える影響を懸念する向きもあるわけで、踏み上げ太郎さんwha_manさん(お二人とも資産運用の最前線におられます)が言うように、株価への影響は避けられない状況でもあります。
私の見解としては、一時的な混乱があってもなんとかなる、というのが一連の反日デモの経済への影響だと思います。なんせデモに参加していながら、デモの様子を撮影・記録しているのが「日本のメーカー製のカメラ」なんて笑い話もあるぐらいですから。


さて、反日デモはいまのところ60年代の学生運動レベルで収まっていると思います。
よその国(というかこの場合はアメリカか)の大使館に投石etc.はさすがになかったと思いますが、それなりに豊かになってきて、外に目を向ける余裕が出てきた&意識が高まってきた、という点では良く似ていると思います。
大使館に投石云々も、大使館を政府諸機関に置き換えれば、大体日本の学生運動に似てきているかと。
そのあたりについてはEspresso Diary@信州松本:反日デモ~遊離したエリートたち~で興味深い一文がありました。

司馬遼太郎が、かつて日本の学生運動について書いていました。大学の中に一歩入ると、まるで明日にでも革命が起きるような雰囲気になっているが、街に出てみると人々は働き、普通の暮らしがあるばかりだ、と。私には、昭和の日本の学生たちが「反米」を叫んでいたように、いま中国の若者たちが「反日」を言っているように見えます。彼らは社会から遊離しているんじゃないか?と思います。

このあたりは、佐藤大輔氏征途の中でも、「学生運動に参加していた学生が、大学4年生になったら何事もなかったかのように就職活動をし、一流企業に入社」という一文が印象的です。確か2巻にあったかと。
ただ、2点当時の日本と異なることがあります。
1つは中国が民主主義国家でないこと、もう1つは社会に大きなひずみがあり、解決するか怪しいこと、です。
1つ目については、戦後の日本は一貫して民主主義国家で、一方の中国は共産党の独裁政体が続いています。
言論については言うまでもありませんし、気に食わない党派に投票しない自由があることによって、かなりガス抜きが図れます。「いやなものはいや」といえるだけでだいぶましです。
(とはいっても国体では自民党の単独政権じゃないか、という意見もありますが「派閥」という「政党内政党」があり、「中選挙制」で同じ政党の議員が複数名立候補できる、という点で「擬似政権交代」が図れていたと思います)
中国については、一連の反日デモが「官製」とうわさされるぐらい言論面で統制されているわけですし、法輪功への弾圧を見ても、「共産党以外の(政府の意に沿わない)分派行動は認めない」という点で、選択の余地が少ないといえます。
このあたりについては孔子の戯言:反日暴動を見て思うことが詳しいですね。
2つ目については、工業地帯と農村、先進地域(日本でいうところの東名阪、中国でいうところの沿岸)と、後進地域(日本でいうところの「地方」、中国でいうところの内陸)の差をどう対応するか、というところです。
日本であれば、地方交付税「我田引鉄」に代表される箱モノ投資、「就職列車」のように農村から都市への移住により、国民一人一人でそれなりに平等感が得られる経済運営がなされてきました。
一方、中国はここ20年ぐらいで日本がこつこつと歩んできた40年分(戦後~バブル前夜)を一気に、それこそ人口・面積が段違いにもかかわらず追いつこうとしたため、どうしてもあちこちにゆがみが出ています。
特に農村部と都市部については、もともと格差があり、農民が自由に都市に出られないなどの差別がありました。
そこにきて、一気に近代化の波が訪れたわけで、当然波に呑まれている層(というか社会の矛盾を押し付けられる層)に公害etc.のツケが回るわけですね。
こういった層に十分な援助を与える余裕もなければ、「近代化に邪魔」と考えて援助そのものを与えない可能性もあります。
(「農村は都市を包囲する」という言葉があるぐらいですから、よっぽど農村のことを恐れていたのかもしれません>中国指導層)


それで、上に上げた2つの違い(民主主義政体か、農村(地方)と都市の差を埋める政策を採っているか)のほかに、日々是チナヲチの御家人さんによれば、上層部の対立が発生しているとのこと。
→詳しくは
邪推満開で振り返る「反日」。(上)(下)
「言論の自由が制限」「農村の疲弊」「上層部の対立」の3点は、どうも2・26事件のシチュエーションに近いものを感じます(汗
まぁ、北京が反乱軍で制圧される、ということはないでしょうが各地で発生している(反日とは必ずしも連動しない)暴動が、いつの間にか乱へとつながらないことを祈るばかりですね。
暴動がおきる背景については清谷防衛経済研究所 ブログ分室:北京にとってはホントウはこちらが怖いが詳しいですね。


追伸:
日中関係については、次のエントリが興味深いです。
雪斎の随想録:日本人の「世界」観
カワセミの世界情勢ブログ:中国の反日デモに思うことと日本の二重保険戦略


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【國際】中国の反日デモについて” への13件のフィードバック

  1. 世界的対中戦略を考えろ

    外務大臣が中国に抗議しに行っているが、予想通りなめられている。こんなことだから政府の信頼は無くなるばかりである。どうしてもっと世界的な戦略をたてることができないのだろうか?(こんなことだから、各国からなめられるのである。)
    今の中国が最も恐れるのは「2008年北京五輪の失敗」である。これは国の威信がかかっているためである。まだ3年という期間があるので、これを切り札にしてもっと中国に対して強い姿勢をとってもらいたいものである。
    その手とは、アメリカと欧州もこの問題に巻き込むことである。アメリカはドル・人民元の為替レートに変動制を導入したがっている。欧州は武器輸出解禁問題がある。いずれもが中国に対して解決したい問題を抱えているのだから、これらと手を組むのである。
    アメリカに対しては、変動為替制への移行を支援することを約束し、反日デモに対して日本を支持してもらい「北京五輪中止/他場所開催」をちらつかせて解決を迫る。欧州に対しては、武器の売買を認める訳にはいかないが、ドル・人民元の変動制に賛成というように傾いてきた欧州を引き入れて、同調してもらう。これにより、日本・アメリカ・欧州が手を組み、最終的には「北京五輪」をターゲットにして圧力をかけ、それぞれの問題の進展を迫ろうというものである。
    で、2008年の五輪については、2012年の開催都市と絡めて話を続ける。2012年には、ニューヨーク、ロンドン、パリという所が立候補しているが、2008年の代替開催を1996年に開催したアトランタと2012年に立候補しているニューヨークでの開催とし、2012年は欧州のどこかとする。(ついでに、2020年の夏季五輪に札幌や福岡が立候補したいそぶりをしめしているので、2020年の日本開催の支援も約束させておけばよい。)
    これにより「北京五輪」を奪われたくない中国としたら、何らかの対応を取らざるを…

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