以前告知したとおり、11月末に分割が行われた銘柄を売建玉で持ち越してみました。
まず、対象となった銘柄は下記のとおりです。
(告知では1銘柄と記載しましたが、実際には4銘柄あり、うち関門海が権利付最終日(11/24)時点で売り停止となっていたので3銘柄で実験しました。また、パトライトについては東京市場での実験としました)
日本エンタープライズ(4829)
1:2の分割
11/24の終値:106,000円(修正後の価格=53,000円)
パトライト(6825)
1:2の分割
11/24の終値:2,795円(修正後の価格=1,397.5円)
タキヒヨー(9982)
1:1.5の分割
11/24の終値:683円(修正後の価格=455.34円)
貸借倍率が1倍を超えている場合、証券金融会社は分割で発生する新株(の権利)を売却するため、「売入札」を行います。逆に貸借倍率が1倍を切る場合、分割で発生する新株(の権利)を買付けするために「買入札」を行います。
当たり前の話になりますが、「安く買って高く売る」のが取引の儲かる基本である以上、「売入札」(入札に参加する投資家から見れば買付)の場合は権利処理価格が低く、「買入札」(入札に参加する投資家から見れば売付)の場合は権利処理価格が高めになる傾向があります。
各銘柄の権利付最終日時点での貸借倍率、および権利処理価格は次のとおりです。
日本エンタープライズ(4829)
貸借倍率 8.94
権利処理価格 50,229.00円
(修正後の11/24終値=53,000円)
パトライト(6825)
貸借倍率 0.66
権利処理価格 1,423.00円
(修正後の11/24終値=1,397.5円)
タキヒヨー(9982)
貸借倍率 1.76
権利処理価格 222.31円
(修正後の11/24終値=455.34円)
11/24の終値を分割前の建値とした場合、権利処理価格を引いた後の建値は次のとおりです。
日本エンタープライズ(4829)
106,000円-50,229円=55,771円
パトライト(6825)
2,795円-1,423円=1,372円
タキヒヨー(9982)
683円-222.31円=460.69円
権利処理後の建値を見てわかるとおり、貸借倍率が1倍を切っていたパトライトの権利処理価格が、かなり売方にきびしい内容となっています。
逆に、貸借倍率が高めの日本エンタープライズは買方に厳しい内容となっています。
また、実勢とかなり乖離した価格で権利処理が行われた場合、その後の株価に大きな影響を与えます。
よく、分割銘柄(特に信用銘柄)で株価が右肩下がりになる傾向があるのは、権利処理後の建値が実勢価格に比べて大きく上回り(=含み損が拡大)、建玉を保有している投資家が投げるためです。
さて、権利処理価格が実勢価格に比べて低め(売入札)・高め(買入札)となる傾向があるのは、権利確定から新株式が到着するまでの2ヶ月分のリスクプレミアムを見込んで入札するためです。
しかし、来年の1月4日以降に権利確定日を迎える銘柄については、権利確定日の翌日に売却可能となるため、権利処理価格のあり方も変わってくる可能性があります。最初の権利処理が12/28に行われるので、要注目ですね。