11/26 吉崎達彦氏による「経済と安全保障から見た米中関係」を聞いて

たまには文化的な(笑)生活を送るべく、双日総研の吉崎氏の講演会に行ってきました。
(主催:霞山会
話の趣旨としては、米中関係+日中関係について、吉崎氏の中国訪問(11/16~11/22)で見聞きしたことや、ここ数ヶ月氏の溜池通信で展開されてきた見解を織り交ぜたものでした。
まず、中国訪問については「日中対話」(岡崎研究所と中国社会院・上海国際問題研究所)の内容が中心で、その「対話」も激論だった模様です(馴れ合いじみたことはなかったとか)。
カウンターパートとなった社会院・上海国際問題研究所ともに、日本ヲチャーを中心にメンバーを集めてきたようで、大抵の話は日本語でできたとのことです。(日本ヲチャーではない軍人が入っている場合は、日本語ができないために通訳を通す)
ただし、シビアな御題(たとえば尖閣諸島問題や靖国問題)になると、必ず通訳を入れてワンクッションを置き、公式見解以外は発言しないという、一種のチームプレーがあったようですね。
これは、おそらくうっかり間違えた(言葉の使い方を誤るなど)・本音の発言を、本職の通訳でフィルタをかけ(都合の悪いことはデリートして)、建前との乖離を少なくしようとしているのでしょうか。
話が逸れるようですが、ここ数年中国との付き合いが多い父@某半導体企業いわく
「今まで付き合いのあった国(欧米・台湾・韓国・シンガポールなど)の企業は、大抵カウンターパートが英語を話せるので、話す分にはストレスを感じなかったが、中国の企業とは必ず通訳が間に入るので、とても疲れる」
とか。これも、交渉内容に関してうかつに言質を与えないようにするためなのかな、と思いました。


で、今回の講演を聴いて、気になったこと・考えたことをいくつか。
1.目に見えるお題目・ハード先行(世界初のXX、世界最大のXX、覇権などなど)で、経済合理性(含む持続可能な経済成長)がついてきていない
→上海のリニアモーターカーなどが典型で、利払いに困るほど、経営難になっているとか(なんせ、ジーメンスの人柱にされた説がハングル板@2チャンネルのTGVスレに出る始末)。
「対話」では、春暁ガス田問題を何気なく投げかけたところ、経済合理性は二の次で、領土問題としてゴネようとしているフシがあったようです(言質は引き出せなかったようですが)。
また、沿岸地域と内陸部の差、1人あたりの平均所得を増やそうにも頂点(沿岸)の所得を増やすのは簡単(これにより見かけ上の平均所得はアップ)だが、内陸部の所得アップは難しいのでは?とのこと。
→ただ、中国の経済学者によれば、このままでは次のステージに進めないため、ソフト・システムの導入・開発・改善に力をいれ、また環境問題にも注目する動きが出ているとのこと。
2.米中間には、経済版の相互確証破壊(MAD)が存在するのでは?
→これは
・中国→米国債の大口顧客、米国の経常赤字のファイナンスを担っているといってもよい
・米国→中国製品の大口顧客、こけたら(もしくは経済制裁されたら)中国経済への影響大きい
これは、どちらも有効(致命的)な手を打ちにくい状況下になっているともいえるわけで、どうしても口撃に終始するきらいがあります。
例:台湾問題
→台湾国内の世論が独立・帰属で真っ二つに割れているため、米国としては(MADの問題もあり)国防がらみの具体的な支援を行えない。そのため、「独立はそれなりに支持するとしても、それに伴うトラブル(軍事侵攻など)の面倒は見切れない」というスタンスに。
→中国としても、日中戦争の再評価による国民党との和解演出、尖閣諸島カードなどを使って台湾内部の切り崩しを図るものの、以前やった大演習など派手な動きは控えめ。
例2:米中間の経済問題
ゼーリック演説内に「責任ある大国(responsible stakesholder)」の一環として触れはするものの、具体的な制裁etc.は大事にならない範囲内で済んでいる。
3.米中の外交政策は相似形か?
これは、共に外交に「国民感情」が先に来るという点を踏まえた上で考える必要があります。
無論、今の中国には「民意」が表ざたになることはあまりありませんが(なったら刑務所行き)、「雰囲気」としての民意はやはりあるわけです(一歩間違えると政府と思惑に反した反日デモが勃発)。
また、他が逆らいがたい大国であることも「国民感情」を背景としたごり押し政策を進めやすいという
のも、共通した点でしょうね。
ただ、ここ100年ほどは、アメリカ外交政策が「自由と民主主義」の伝道者たることに積極的(押し売り的、ともいう)であることは、「資本主義の導入」以外の欧米的価値観の受け入れに消極的な中国と対照的といえますね。
(中国と仲がよい国が、札付きの抑圧国家が多いということからも伺えます)
4.日本は米中間のバランサー?)
(→某国バランサー論についてはこちら
日本+中国で、何とか米国に対抗できそう
日本+米国で、それなりに中国と対抗できそう
では、日本はどちらにつくべきか?という話ですね。
このあたりは「反米派VS親米派」「大陸派VS海洋派」の文脈でよく語られることですが、キャスティングボートは実は日本が握っている可能性があるわけで・・・。


取り留めのない文章となっていますが、まずはこのあたりで。

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