【中国株】CNOOC(中国海洋石油)、ユノカル買収か

先週から、CNOOCによるユノカル買収の憶測が流れていましたが、金曜日に買収に向けたCNOOCの機関決定がなされたようですね。買収交渉入りについてはユノカル、および買収で競合しているシェブロンの同意が得られている模様です。
概要についてはライブドアファイナンス:WSJ-シェブロン、ユノカル買収提案の妥当性を主張をご覧ください。
さて、買収の中身ですが、フジビジネスサンケイアイによると次のとおり(→元記事

 ユノカル買収については、中国海洋石油と米石油大手のシェブロンが競い合っていたが、今年4月、シェブロンが総額180億ドル(約1兆9620億円)で買収することで合意していた。しかし、その後中国側が再攻勢をかけており、買収総額として200億ドルを提案する方針で、23日にも開かれる中国海洋石油の取締役会で正式決定される見通しだ。

負債込の金額で考えると、上記の数字が妥当なラインであると思われます。
(負債抜きで185億ドル程度
日経:(6/23)中国海洋石油、ユノカル買収を正式提案・185億ドル提示
CNN:中国海洋石油、米石油大手ユノカル買収を提案


さて、買収の中身について検討してみます。
CNOOC:全額現金
シェブロン:自社株+現金
ここ最近の原油価格の動きを考えると、CNOOCが買収に成功したとしても、思いっきりババを引きそうな気配です。
根拠としては:
1.自前の現金が185億ドルもあるわけがなく、当然のことながらファイナンスで手当てする必要がある。
→目下、銀行からの借り入れでまかなうようですが、年間の金利負担だけでユノカルの2004年分利益を食いつぶす、なんて話もあります。(→中国情報局(サーチナ):中国海洋石油:米の圧力恐れず、ユノカル買収か
これを受けて、S&P、フィッチ、ムーディースが格付の引き下げ、ないし格付見通しの下方修正を行ったようです。
PRESS RELEASE:Fitch Places CNOOC BBB+ Rtg On Watch Negative
Moody’s Reviews Cnooc’s A2 Ratings For Possible Cut
S&P Puts CNOOC Companies On CreditWatch Negative
2.石油価格が実需と離れた水準で推移しているため、関連のある会社の価値も水ぶくれしている恐れがある
→ありていに言うと、ぼったくられる可能性がある、といったところでしょうか。
→シェブロンとユノカルの株価パフォーマンスを比較したところ、低パフォーマンスの株(シェブロン)を高パフォーマンスの株(ユノカル)に交換、というシナリオが浮かび上がりました。

このあたりについては、いちカイにヤリ:モルガン・スタンレーのエコノミストは石油価格が急落すると見ているけど、、、が参考になります。
3.シェブロンとの対抗上、人件費が削れない
シェブロンは人員整理を行うと宣言しているようですが、CNOOCは雇用を維持する、という立場にたたされています。特に、対アメリカ政府を考えると、どうしてもそういわざるを得ないですね。
参照:日経:(6/25)中国海洋石油、ユノカル買収で「米政府と協議の用意」


さて、買収で得られるものについても考えてみます。
ダウ・ジョーンズのIrene Tang 氏によれば、いくつかのポイントがあるそうです。
(元記事→CNOOC Eyes Unocal Profit, Know-How – But Not Fuel Supply

If completed, the acquisition would be unlikely to directly solve China’s energy-supply concerns, nor would it result in a sudden stream of liquefied natural gas into the country’s planned receiving terminals in China.
However, CNOOC would acquire profitable upstream gas operations elsewhere in Asia, as well as key technical expertise. CNOOC particularly needs expertise for China’s offshore East China Sea, where foreign companies fear to tread because of a China-Japan dispute over drilling rights.

ようするに、買収したからといってドバドバと中国に石油が流れ込むわけではないが、高度な採掘・運営技術や、それなりに利益が出そうな油田・ガス田が手に入りそう、とのことですね。
昨年来の一連の流れについては、極東ブログ:行け、行け、中国海洋石油!が参考になります。
また、ユノカルの資産については次のとおり述べています。

Unocal has 1.754 billion barrels of oil equivalent of proven reserves, 57% of which is in Asia. Of the company’s proven gas reserves in particular, close to 75% are in Indonesia, Thailand, Bangladesh, Vietnam and Myanmar.

政情が今ひとつ安定しない中東や中央アジアに比べ、比較的安定していると見てよい東南アジア・南アジア域での産油量が多いのは魅力的に見えます・・・。
ただ、これも落ちがあり;

But with the exception of Indonesia, all of Unocal’s Asian upstream gas operations have long-term commitments to supply their respective domestic markets or be exported to neighboring countries through pipelines. Gas demand in these countries is rising fast.

実際には、インドネシア以外の諸国が、自国・近隣国向けに供給する契約となっているため、かならずしも中国向けには振り分けできないようです。
まぁ、このあたりについてはあまり気にしていない、というより成長著しいアジア市場で競争力を増すことができる、と割り切っているフシもあります。

“This (acquisition) will help us become a key competitor in the Asian market,” CNOOC Chairman Fu Chengyu told a teleconference Thursday.

・・・正直、本末転倒な気もしますが、技術力を買うのが大前提なのでしょうね。


さて、中国政府は必死になって石油集めをしている、という話もあります。
宮崎正弘の国際ニュース早読み:なお執拗に米国メジャーを標的~中国国有石油企業CNOOCがユノカル(米国メジャー)買収に再び王手
親方中国が後ろにいるとなると・・・。低利・無利子の融資を受ける、経済性を度外視した投資などなど、予想がつかない動きとなる可能性もありますね。春暁ガス田をめぐる一連の争いなどは、その最たるものでしょうか。
今後どうなるか、注目ですね。


(追記)結論が変だったので追記。
正直、中国があわてて資源のかき集めに走っている姿は、まるでバブルの際に日本企業が不動産etc.を買いあさっている姿に似ている気がします。
「今買わないと、後でもっと高値でつかまされる」という恐怖を前にして、冷静な分析が通らないのかもしれませんね。

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